視力回復のための基礎知識
↑眼球の大きさ(奥ゆきの長さ)によって起こる軸性のトラブル図
目に入る光が網膜でピントが合って像を結ぶ状態を正視といいます。それに対して、網膜の手前で像を結ぶ状態を近視、網膜の後ろで像を結ぶ状態を遠視といいます。近視と遠視には、それぞれ眼球の奥ゆきの長さによって起こる軸性(イラスト参照)と、角膜・水晶体の屈折力の状態によって起こる屈折性とがあります。
子どもは、眼球が小さいので奥ゆきが短い傾向(遠視)が多く、眼球の成長とともに正視、近視となる傾向があります。
近視とは
近視は、遠くにあるものが網膜の手前で像を結んでしまう屈折の変化です。ですから、遠くのものはよく見えなくなりますが、近くにあるものは、ちゃんと網膜で像を結ぶため、比較的よく見ることができます。
網膜の手前にピントが合ってしまう原因は二つ。一つは水晶体をふくらませたり薄くしたりすることをコントロールしている毛様体筋(もうようたいきん)にトラブルが起こっているためです。遠くを見る時、毛様体筋がうまく働かず、水晶体を薄くすることができないと、遠くがぼけてしまいます。水晶体の屈折力が強すぎるためです。屈折が原因なので「屈折性近視」といいます。これは、テレビやパソコン、スマホなどを近くで長時間見続ける、目に悪い生活が主な原因です。
もう一つは、眼軸長(がんじくちょう=角膜から網膜までの長さ)が長すぎることによる先天的なもので、「軸性近視」といいます。
遠視とは
遠視は、遠くがよく見えて、近くがぼやけるというのは、大きな誤解です。
5メートル以上遠くの像を見ている時、私たちの目は、水晶体の厚みを調節しない(無調節状態)で見ていますが、このとき遠視の人は網膜の後ろでピントが合ってしまうため遠くがぼやけていますし、近くはもっとぼやけています。
遠視でも程度が軽ければ、水晶体をふくらませる「調節」をおこなって、ピントを合わせることができるので遠くがよく見えます。しかし、近くにピントを合わせるには、遠くを見るよりもっと水晶体をふくらまさなければならないので、近くは見えにくくなります。
つまり、遠視は、前述のように毛様体筋をいつも緊張させているので、毛様体筋へのストレスが多くなります。
網膜の後ろにピントが合ってしまう原因は二つあります。一つは水晶体の屈折力が弱いためです。これを「屈折性遠視」といいます。もう一つは、近視とは反対に眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が短いためです。屈折力が普通でも、角膜から網膜までの長さが短いので、ピントが網膜の後ろで合うことになる「軸性遠視」と呼ばれる先天的なもので、遠視はこれがほとんどです。
(注意)
遠視をそのままにしておくと、遠くのものも近くのものも、網膜にしっかりとした像を結ばないため、脳にきちんと信号が伝わらなくなり、脳の中にある見たものを分析する部分が十分に発達しなくなる心配があります。その結果、斜視や弱視になることもあります。
乱視とは
乱視の見え方は、ものの輪郭がはっきりとせずに、いくつにもダブって見えます。また、乱視は遠視や近視とともに起こることがあり、そのときは、さらにぼんやり見えてしまいます。
乱視は角膜や水晶体のゆがみによって起こる屈折の変化です。その種類は、「正乱視」と「不正乱視」に分けられます。
正乱視は、角膜がきちんとしたドーム状ではなく、ドームの縦と横の半径が異るため、角膜の方向によって、光の屈折が異なって起こる乱視です。それに対して不正乱視は、屈折面がなめらかでなく、光が不規則に屈折するために起こる乱視です。このほとんどが角膜の表面の小さな凸凹によって起こります。
子どもの乱視の多くは、正乱視です。この正乱視の場合、角膜がゆがんでいると、見ようとする目標の光が、ある部分は網膜の前でピントが合い、ある部分では網膜の後ろでピントが合うといったことになります。
(注意)
乱視は網膜の前や後ろでピントが合っている状態なので、メガネで矯正しない限り、はっきりした像を網膜で得られません。6歳以下で乱視の程度が強いと、脳の映像情報を分析する部分が育ちにくくなり、その結果遠視と同じように、弱視となる恐れがあります。幼い子どもの乱視が見つかったら、なるべく早くメガネで矯正して、ピントの合った像を見る必要があります。